農業への想い

これからの日本の農業を考え、行動する

北海道に進学し、農業とは無縁の日々を送っていたからこそ見えた地域の疲弊。「この地域を守っていきたい」という想いから就農したものの、現実は易しいものではなかった。

いつも見ている景色の中に

生まれたときからそこに当たり前にあった岩手山。そして反対を向けば姫神山。

この二つの山々の間に位置する玉山は、昔から畜産と稲作が盛んな地域。当たり前すぎて何も見えていなかった。

農家の生まれではない嫁が、風景がきれいだからとカメラを持ち歩き、写真を撮る。

見慣れていて感動もなかった自分は「そんなにきれいかな?」と疑問に思っていたのに、嫁の写した姫神山は驚くほど美しかった。

今まで、地域の何を見てきたのだろう?

地域を守るのは、地域の伝統も守ること

地元では給食にも出るくらい当たり前の豆、「黒平豆」。
玉山の在来種で、どこの家もおばあちゃんですら知らない時代から作っている。

でもそれは、合併後の「盛岡市」の人は知らないこと。そしてこの豆の美味しさも知らない。農業者が高齢化し、全ての作業を機械化できないこの豆は、どんどん生産量が減ってきた。

「こんなに美味しいのに、知らなかった。勿体無い!もっと色んな人に、食べて欲しい。」嫁はそう言って、慣れない手つきで豆を植え始めた。

地域でずっと種取りをしてきた知人から譲ってもらった、遥か昔から玉山にあるこの貴重な豆を。
この文化も、地域も、風景も、守っていきたい。

岩手のこの土地で

雪が融けて何もない大地が顔を出す

さあ、今年もここに日本国民の「食」となるものを育てる。雪の下で寝むっていた土を起すように耕す。

春の太陽が、大地の中のいろんなものを起こし始める。こんなふうに毎年ゼロからスタートする。

今年の太陽、風、雨・・・。とりまく自然は、決して生易しくはないけれど、それでもたくさんの恵みを私たちに与えてくれる。

耳を澄まして、目を閉じて、風を、温度を感じてみる。全てが生きているように感じる。

いろんなもので誤魔化さないで、自然と会話をしながら、食物のもつ本当の美味しさを最大限に引き出してやりたい。などと思う。

家族で地域で

農業はひとりではできない。

地域では、農家の家族が減っていく中、うちに家族が増えた。

天真爛漫な笑顔で、農業の重労働も楽しそうにこなしていく我が家の救世主だ。

「農家をなんとかしなくちゃ、日本の食が大変なことになる。」誰よりも熱く語る嫁に、農家の息子としてのDNAが刺激されて、改めて農家の使命を感じる。

大地と太陽の恵みで育つ作物の味が一番美味しい。「美味しいものを、大切な人に食べてもらいたい」と想いがひとつになった。

たくさんの人に、本当に美味しいものを食べてもらいたいからこそ、作り手も家族で、地域で支えあい、手間をかけても護っていかなければと思う。